ほっじぽっじすてーしょん

広く浅い、多趣味野郎の時事録

片隅で感想文18『月がきれい』

こんにちは。わさびです。

 

ついに夏が来てしまいました。

年越ししたのがついこの間のことのように思えてならないのですが、時が経つのは本当に早いものです。

 

さて、6月も終わり、いわゆる春アニメが一通り終わったわけですが、皆さんはどんな作品を鑑賞しましたか?

 

「アニメなんて見ねぇよ!」という方はとりあえず置いといて。(おい)

 

私は最初こそ色々な作品を観ていたのですが、全編通してしっかり観た作品は3作品に落ち着きました。少し前ならもっとガッツリ追っていたと思うのですが……体力の衰えをひしひしと感じます。

 

で、今期通して観た作品は一体どれなのかというと……

 

サクラクエスト

レクリエイターズ

月がきれい

 

この3作品です。

(『正解するカド』はAmaz○nプライムが有効なうちに観ておきたいと思います!)

 

サクラクエストは『辺鄙な田舎の町興し』という扱いづらそうな題材を上手いことコミカルに描きつつ、P.A.worksらしい綺麗な作画がそれを支える形になっていました。「めちゃくちゃ面白い!」というタイプの作品では無いと思いますが、非常に安定感があって毎週楽しく視聴してます。

 

レクリエイターズは……広江先生パワーを信じて観てます。

 

上記の2作品はどちらも2クールなので今がちょうど折り返し地点。どんな展開になっていくのか、これからも目が離せません。

 

そして、春アニメで個人的にぶっちぎりでNo.1だったのが、

 

月がきれい

 

……正直に言うとですね、この作品に関しては私なんかの薄っぺらい言葉なんて不要だと思うんですよ。

 

黙って観ろ、そして感じろ

 

この一言に尽きる。

それでも、こんなに素晴らしい作品に出会うことが出来て、感じ取るものがあったからには何らかの形で出力しなければならない。という謎の使命感に駆られ、現在筆を執っている次第です。

 

それでは前置きもそこそこに、本題にいってみましょう。

 

月がきれい

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tsukigakirei.jp

 

あらすじは公式HPを見てもらったほうが良いかもしれません。(12話構成のストーリーをどこまであらすじとしていいのか微妙ですし)

端的に言うと、今時の中学生の恋愛模様を描いた作品です。

クラスではあまり目立たない文学少年の安曇小太郎と、陸上部で活躍するスポーツ少女水野茜 。同じクラスになるまで、全く接点の無かった二人が次第に惹かれあっていくというストーリー。

 

これだけでもなんとなくわかって頂けると思うのですが……非常に地味

しかし、この地味さこそが本作最大の持ち味であり、武器だったのです。

 

『地味』が武器?

まず初めに、これだけはハッキリと言わせてもらいますが、本作には『この作品ならではの設定』というものがありません。第一印象でガツンと視聴者にインパクトを与えるギミックが仕込まれていないのです。

 

「えー、それじゃ面白く無いじゃん」

 

と思ってしまうかもしれませんが、ところがどっこい

 

これが非常に良かった。

 

「特徴が無いのが特徴」と評された某モビル○ーツがいましたが、本作はそれを地で行く作品だったという印象。

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                呼んでない

 

では、なぜ『地味が武器になったのか』をもう少し掘り下げてみましょう。

 

 

基本的に、学園モノは基礎となる設定に普遍的な意味合いが強いジャンルです。

 

学校の中には、教師と生徒という立場がある。

教師には受け持つクラスまたは教科がある。

生徒には所属する学年、クラスがある。

体育祭、文化祭、音楽祭、修学旅行……という特別な行事がある。

部活がある。

教室がある。

テストがある。

制服がある。

宿題がある。

アルバイトをしたりもする。

進学、就職といった未来を抱えている。

 

……等々。もちろん例外はあると思いますが、学園を題材にするだけでおおよその枠組みが決定されるというのが学園モノの強みであり、また弱みでもあります。

 

なぜこれが強みになるのか。

それはとても単純な話で、なんといっても説明が楽だからです。

 

例えば「なんで修学旅行をするの?」「なんで部活があるの?」と聞かれたとき、あなたはその理由を明確に答えることが出来ますか?

 

私は出来ません。(おい)

 

もちろん「実地で歴史、技術を学ぶため」だとか「部活というグループに所属することでクラスとは違う人間関係の構築方法を学ぶため」だとか、それっぽい理由を適当にくっつけることは出来ますが、結局のところ

 

「学校だから、あって当たり前でしょ」

 

という意識が根底にあるんですよね。

 

自分が経験してきた組織であるが故に、いまさら疑問を差し込む意味が無い

(少なくとも『創作』という分野においては)

 

とでも言えばいいのか。

そして、『視聴者が疑問を持たない』ということは、書き手側としては『説明する手間が省ける』わけです。これは視聴者と書き手、どちらにとっても途轍もないメリット。

だって、作者が説明するまでもなく『学園モノ』というジャンルを提示しただけで、題材となる組織の概要が視聴者側と共有出来るわけですよ?

 

「この組織は~という経緯があって、~という部門を筆頭とした~つの部署に分かれていて~という事を目的にして動いている」

 

といった雑多な説明・設定を一から作る必要が無い、なんて素晴らしいフォーマット!

サブカル分野で学園モノが多い(気がする)のも、この強みに因るところが大きいのではないでしょうか。(他にも、メインターゲットとなる中高生が感情移入しやすいというメリットもありますが)

 

……さて、これだけの強みを持つ『学園モノ』ですが、

『強い光の差す場所には濃い影が出来る』

という言葉のとおり、その強さゆえの致命的な弱みがあります。

前述のとおり、学園生活というのは誰しもが経験してきたものです。

 

……要するに『目新しさに欠ける』わけですね。

勉強して、テストして、部活して……なんて普通に描いただけでは面白みが無い

 

では、この強烈な弱みを消すためにどうするのかというと、

 

 

圧倒的なドラマ、設定で打ち消す

 

 

というパワープレイに走るんです。

 

普通の学校の部活で頑張って県大会に行った?つまらん!!

だったら

弱小校を全国大会で優勝させよう!!

強豪校で仲間たちと切磋琢磨しあいながら全国優勝させよう!!

 

主人公がひたすらに凡庸?つまらん!!

だったら

変な部活作って入部させよう!!

ひょんなことから超能力に目覚めさせよう!!

 

 学校が普通?つまらん!!

だったら

能力者たちが集まる学校にしよう!!

廃校寸前の学校にしよう!!

 

こういった設定が悪い、と言いたいわけでは無いです。

むしろ、こういった独自の設定を用意せずに学園モノで独自性を出して視聴者を魅了することは出来ないでしょう。

 

 

 

そう、思っていました。月がきれいを観るまでは。

 

 

 

……すごい、凄かった。(語彙貧)

初めにも言いましたが、本作には『この作品ならではの設定』がありません。物語をドラマチックに彩る、露骨な下地が一切無いのです。

 

どこにでも居るような地味な文学少年が、普通の学校生活の中で普通にスポーツ少女と出会い、普通に惹かれあっていく。

登場人物が特別なドラマを背負っているわけでもなく、悲劇が起こるわけでもない。

どこにでも居そうな、どこにでもありそうな、ひたすらに普通の恋模様。

 

なのに、なぜこんなにも心を掴んで離さないのか。

 

 今のご時勢、男女の中身が入れ替わってる~!?しちゃったり、どちらかが不治の病に罹っちゃったりするのは日常茶飯事なわけです。ちょうど視聴中なので挙げさせてもらいますが、レクリエイターズのような『創作』に対するメタ作品も登場してきました。

大切なことなので何度でも言いますが、それらの設定が悪いと言うつもりは全くありません。素晴らしい作品は沢山あります。

しかし、『どうやって他作品と差別化を図るか』という部分がフォーカスされている中で、これだけ『普通』を追求した作品は、かなり珍しいのではないでしょうか。

そして、その『普通』を追求して得た『無個性』が、結果として唯一無二の『個性』になっている。『地味さ』が武器になっている。

 

『特徴が無いのが特徴』

f:id:wasabiwasabi:20170711014354j:image                    呼ん……でねぇっ……!

 

まさにアニメ界のジム。(※めちゃくちゃ褒めてます)

わかり易いカッコよさは無いかもしれませんが、一度魅了されたら嵌ってしまう味わい深い作品だと思います。

 

ちゃんと中学生

これまた地味なポイントではあるのですが、

 

こいつらなんでこんなに中学生なんだ!?

 

と言いたくなるほど登場人物がちゃんと中学生。凄い。

少しだけ背伸びした言動、ぎこちない会話。

小学生ほど単純でも、高校生ほど擦れてもいない。ピンポイントで中学生

 

凄い。

 

……思わず語彙レベルが低下してしまいますが、ほんとに凄い。

「脚本書いてる人、中学生なんじゃねぇの?」と疑いたくなるレベル。

当然、私はこんなに素敵な恋をしたことは無いのですが、どこかで当時の自分を重ねてしまいました。

当時はLINEなんか無くてなぁ……ノートの切れ端を折りたたんだ手紙でやり取りをしたものじゃよ……

 f:id:wasabiwasabi:20170711014427j:image

                 ↑歳がばれる

 

 

声優さんの演技も自然で良かったです。

変に芝居がかっていないので、これまた不要な特徴を消すことに一役かっている。

www.4gamer.net

こちらの記事で紹介されているように、本作は音声を先撮りして絵を後から付けるプレスコ方式と呼ばれる制作方法で製作されているらしく、声の演技に合わせた作画が出来るので、絵と声がより一層自然に噛み合うようになっているそうです。なるほど。

 

……そうなんですよね。

本作はひたすらに自然なんです。

またまたお馴染みの台詞を使ってしまいますが、製作者の作為的な匂いがない

だから実際に中学生の恋愛模様を見ているような気分になる。

付き合い始めた友人を横から茶化していた、あの頃の感覚を鮮明に思い出しました。

 

「なんで毎週中学生の恋愛模様を見て一喜一憂しなきゃならんのだ!!」

 

なんてことを言いながら、目が離せなかったオッサンは私だけじゃないはず。

 

こればかりは本当に憶測でしかないのですが、本作は私くらいの年代をターゲットに製作された作品なのではないでしょうか。

青春時代に思いを馳せる程度には年齢を重ね、それでいて近年のコミュニケーションツールにも理解がある年代。

もっと若ければ青春に思いを馳せることなんてないでしょうし(というか青春真っ只中なわけで……)、もう少し上の世代になると年代が乖離しすぎてしまう。

東山奈央さんが歌う挿入歌(これがまた素晴らしい)のチョイスといい、ピンポイントで私ら世代を狙い撃ちしているとしか思えません。

 

全くもってけしからん、もっとやれ。(横暴)

 

結末について

「今までに見た作品の中で作風が近いのはなんだろう」と考えてみたのですが、パッと思いついたのは秒速5センチメートル……

 

……だったんですが。

(結末のネタバレが含まれますので、以下は反転させて読んでください。読みにくかったらスイマセン。)

 

↓ここから↓

どちらも、基本的にリアリティの置き所は同じだと思うんですが、大きく違う部分があります。

リアリティの置き所というのはあくまで私個人の感触の話です。

例えばそれは中高生特有の青さだったり、無力感だったり、ままならなさだったりするわけですが、そういった複雑な青春模様を現実的かつ繊細に描いているという意味でのリアリティです。

もっと掘り下げてしまうと、『秒速~』の方が『月がきれい』に比べてもっと登場人物のバックボーンがドラマチックではありますが。それぞれの作品が醸し出すノスタルジックな雰囲気、その根本は同じモノだと思います。

 

では一体、二つの作品を分ける大きな違いとは何か。

 

それは結末の魅せ方です。

 

先ほども言いましたが、『秒速~』はリアリティのある描写を重視する一方で登場人物がドラマチックな背景を持っています。

……が、それだけ濃密なドラマを見せ続けたにも関わらず、結末はこの上なくリアル。

(結末に関して色々と書こうかとも思ったのですが、長くなりそうだったのでやめておきます。)

 

とにかく、過程をドラマチックに描き、結末をリアルに寄せたのが『秒速~』という作品だと思います。

 

このドラマとリアルのコントラストが『月がきれい』では真逆に配置されているのです。

 

今回の記事で何度も言っているように、月がきれいはひたすらに『普通=リアル』を追求した作品です。

正直な話、私はその流れのまま「リアルな結末を迎えるんじゃないか」と思っていました。

 

小太郎は進学に失敗し、茜と同じ学校には行けない。

二人は結局疎遠になり、小太郎は千夏と付き合うようになる。

しかし、小太郎は初恋を糧に創作活動を続け作家デビューを果たす。

大人になった茜はその小説を読み、当時を懐かしむ。

 

こんな流れがそれなりに生っぽく、創作的なサクセスストーリーとして綺麗にまとまるかな。と勝手に妄想していたわけです。

……まあEDのLINE画面をしっかり見ていればこの結末にならないことが分かるようになっていたわけですが。(私の雑な視聴っぷりは気にしない方向で)

 

だから、これまた勝手な話ですが「小太郎が進学に成功してハッピーエンドだったらこの作品は良作止まりだなー」なんて上から目線で斜に構えていたわけです。

 

そうして迎えた最終話。

案の定(というと失礼ですが)小太郎は進学に失敗してしまいます。

「あー、それじゃあやっぱり別れることになるんだろうなぁ……」

私はそんな事を考えていました。

ここまで丁寧かつ繊細に中学生の『普通=リアル』を描いてきた作品だからこそ、安易な手段は選ばないだろうという妙な確信がありました。

……しかし、ここで薄っぺらいオッサンの予想は裏切られることになります。

 

ひたすらリアルを描き続けた本作は、最後にとびきりのドラマを用意していたのです。

 

最終話の演出は今までにないほどドラマチック。各要素がすこんすこんとはまっていく

感触は作為的なモノを感じつつも全然不快ではなく、むしろ心地良いくらい。

ネット小説の感想欄に茜が

 

「この先はどうなるんですか?」

 

と書いたシーン。ホントに鳥肌ものでした。(千夏が良いアシストするんですわ……)

桜吹雪の中、走り続ける小太郎。BGMは『月がきれい』。

そしてEDで伏線になっていたLINE画面を回収する形で〆る。

 

こんなん涙腺にくるに決まってるじゃねぇか……

 

……とまあ若干脱線しましたが。

本作は過程を徹底的にリアルに描き、結末をドラマチックにした作品だったのです。

 

ここが『秒速~』と決定的に違う。

 

まあ、過程と結末が逆になっているだけで狙っている効果は同じだと思いますが。(過程と結末のギャップによるカタルシス?)

 

「なんか似てるかも?」と感じながらも「いや、やっぱり違うな」と思い直したのはこのあたりが原因だったのかなぁ……と。

 

例によって例のごとく、なんだかわけのわからない文章に仕上がった気がしますが、なんとなく言いたいことは伝わりましたかね?伝わりましたよね?

↑ここまで↑

 

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というわけで、長々と書き連ねてしまいました。

それだけの熱量をこの作品から受け取ってしまったということです。察してください。

 

いつも通り、あまり登場人物には触れませんでしたが小太郎と茜以外のキャラクターも非常に魅力的です。

特に、茜の親友である千夏

一番明るいキャラクターではありましたが、恐らくこの作品の中で一番複雑な想いを抱え続けていた人物だと思います。

それでも彼女はどこまでも真っ直ぐで、それがどうしようもなく切ない。

 

いや、本当に素晴らしい作品でした。

未だ視聴していない方にも是非とも観ていただきたいです。

 

そして、グッと来た人は僕と握手!!

 

9月末にはBDBOXも出るからよろしくな!

全話入って2万円と、BOXにしては大変お買い得だぞ!!(ダイマ)

 

最後になりますが、今回はかなり熱が入ってしまったので言い訳を少々

 

この記事はあくまで私個人の感想です。

「これのどこがリアルじゃ!」

「なに知ったかぶりしてんだ!」

といったご意見も当然あるかと思いますが、生暖かい目で見ていただけると幸いです。

 

 次回更新はやっぱり未定。

最近は本の感想文を書いていないので、そろそろ書くかも。

 

それでは。

 

ー最後まで読んでいただき、ありがとうございましたー

 

@公式chが配信している間はループさせ続ける わさび