ほっじぽっじすてーしょん

広く浅い、多趣味野郎の時事録

片隅で感想文06:『ほま高登山部ダイアリー』

こんにちは

強化小型球形(斧装備)が見つからないわさびです。

 

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                    ↑こんな感じのやつ

 

 

EMP装備の小型短足とコイツのおかげで個体情報が98%から上がりません!

助けてください!(※ニーアの話です)

 

さて、今回は『書きます宣言』をしていたライトノベル

『ほま高登山部ダイアリー』

の感想文を書いていきたいと思います。

読後の感情が薄れてしまわないように、二日連続の記事作成です。

 

気が付けば、このコーナーを設立してからすでに1ヶ月近く。

記事の本数としても今回で6本目の記事になりますが、

 

一向に文章力、構成力が向上しません!

 

……まあ「1ヶ月程度でグダグダ言うな」という感じですが。

このままブログ更新する癖を付けて、もっと作品の魅力を上手に伝えられるようになりたいものです。

そのかわりと言ってはなんですが、少しづつではありますが、ブログ作成機能は活用できるようになってきました

これからも単純な文章一辺倒な記事では無く、出来る限り分かりやすく、見た目でも楽しめる記事作りをしていきたいと思っています。

 

どれだけの方がこのブログを見て暇つぶしをしているのかは分かりませんが、

どうかお付き合いいただけると幸いです。

 

では、さっそく本題に参りましょー!

 

片隅で感想文06:『ほま高登山部ダイアリー』著:細音啓

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本作は著者、細音啓(さざねけい)先生のデビュー作です。

(2017/5/25訂正、デビューは他レーベルでした)

 

いつも通り、まずはあらすじからどうぞ

 

之々星縁に片思い中の冬嶺冬馬は高校入学を機に、告白を決意する。

しかし、想いの丈を込めた「好きだ!」という言葉も虚しく、ちょっとした勘違いから「登山が好き」だと誤解され、冬馬は縁と共に未知の登山部へと入部することに。

初めて知る山の知識、魅力的な部員たちとの交流の日々。

思いがけない入部で、冬馬の高校生活は鮮やかに色付いていくー。

 

本作をジャンル分けするならば

『学園登山部ラブコメ

とでも言えば良いでしょうか。

私自身、たまに山登りをするのですが、登山漫画は数あれど登山ラノベは見たことが無かったので気になって買った次第です。ヤマノススメはええぞぉ……

 

内容に関してですが、率直に言って非常に面白かったです。

物語の流れはベーシックなライトノベルの流れを汲んだ構成になっています。

高校入学という導入があり、告白というラブコメの要点を掴んでから、本作独自の『登山部』という要素へと繋ぐ。その後、登山の準備としてトレーニング、買い物といったイベントを通過し、登山へと向かうのが大まかな流れです。

ライトノベル、と言うよりも『学園モノ』のテンプレートに沿っている分、物語の自体の意外性はほとんどありません。しかし、その安定感に支えられているからこそ、個々のキャラクター達の魅了が引き立っていたように思います。

若干、主人公の冬馬はキャラクターが定まっていないような印象を受けました(現実主義的な側面と片思いの仕方が噛み合っていないような……)が、問題視するほどではありません。

 

個人的にポイントが高かったのが、『主人公は既に好きな相手が居る』という部分です。もちろん、ラブコメ作品にお約束の女性キャラのお色気シーンはありますが、そういった諸々によって主人公の恋愛感情がブレない……とでも言えば良いでしょうか。

よくあるヤレヤレ系優柔不断主人公がハーレム状態になる話は基本的に苦手(当然例外はあります)なので、こういったブレない恋愛の芯がある主人公は読んでいても感情移入がしやすいです。

今パッと思いついたライトノベル作品だと『SAO』とか聖剣の刀鍛冶あたりはそんな感じですね。(SAOがハーレムものとか言ってるやつは十中八九読んでないから注意な!)

 

本作の独自要素である『登山』も、上手いこと学園モノに当てはめていたように思います。登山の説明や描写で物語をガチガチに固めるのではなく、あくまで素材として日常会話に入れたり、イベントに落とし込んでいるため、学園ラブコメという本筋から外れることがない。かといって登山という要素の扱いが杜撰になっているわけでもない。

このバランスがしっかりしているからこそ、ラブコメ作品として破綻することがなく登山ラブコメとして読みやすかったのだと思います。

登山描写に関しては「人工的に作られた階段の道は歩きにくい」という部分があるある過ぎて思わず笑ってしまいました。

……山道に作られた人工的な階段って、基本的に間隔や高さが不均等に作られているので意外と歩きづらいんですよね(笑)

あと、普段からほぼ山みたいなところに住んでいるようなド田舎民としては「土を踏みしめるなど何年振りだろう」という言葉を見て衝撃を受けました……。自分ではなかなか感じることが出来ない感情を体感できるのも、小説の良いところですね。

 

終盤にはちょっとしたタイトル回収もあり、最後まで学園ラブコメらしい爽やかな読み味でした。物語のフォーマットとしても「一ヶ月ごとに1つの山を登る」という部内のルールが存在するあたり、一巻で1回の登山の様子をまとめやすい形にしたのかもしれませんね。(邪推かもしれませんが)

 

……ということは

 

自ずと次巻への期待が高まるわけです!

ここ最近ライトノベルから離れていたうえ、既に発売済みの作品を買うことが多かったので、ライトノベルの新巻が待ち遠しいというのはすごく久しぶりの感覚です。

こう言ってはアレですが、ドキドキしています。

恐らく、今回の売れ行き次第で次巻、次々巻の発売の行方が左右されるのだと思いますが、是非とも息の長いタイトルになって欲しいものです。

それくらい、私にとってのツボを掴んだ作品でした。

 

登山が好きな方。

登山に興味がある方。

青春学園モノが読みたい方。

ブコメが読みたい方。

 

そういった方なら間違いなく読んで損の無い作品だと思います。

 

とても面白かったです。オススメ!

 

@今年もちょくちょく山登り行きたいなぁーと思いつつ、わさび

 

 

 

 

 

 

 

 

 

片隅で感想文05:『NieR:Automata』

こんにちは

どうも、わさびです。

 

前回は少しばかり趣向を変えた日記的なものを書いてみました。

その間にも何かあっただろ?ナニヲイッテイルノカワカラナイナー???

そこで、今回は『ほま高登山部ダイアリー』の記事でも書いてみようかと思っていたのですが……

 

今回はPS4ソフト

『NieR:Automata』(ニーア:オートマタ)についての記事を書きます。

 

何故、唐突にニーアの記事を書くことになったのか?

答えは単純、素晴らしい作品だったからです。

個人的にはPS4史上に残る名作の一本だと思います。

 

さて、前置きはそこそこに。

本題、いってみましょー!

※作品の感動を全力で感じ取っていただきたいので極力ネタバレ無しでいきます。

 

片隅で感想文05『NieR:Automata』

 

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初めに、私は今作を買うつもりがありませんでした

と言うよりも、発売後しばらく様子見をするつもりだったと言った方が正確かもしれません。

私自身、今作のディレクターであるヨコオタロウ氏が手掛けたゲームを今までにいくつかプレイ(DOD2、前作ニーアレプリカント)しており、その重厚感のあるシナリオ、ダークな世界観に魅せられたクチなのですが、とある不安材料が私に二の足を踏ませていたのです……

 

その不安材料というのが開発元の変更です。

 

今回の製作・販売はスクウェア・エニックスなのですが、開発はプラチナゲームスになっています。

プラチナゲームスベヨネッタヴァンキッシュメタルギア・ライジング(MGR)』など、アクション性の強いゲーム開発を得意としているメーカーです。

前述の3作品を私はプレイ済みです。確かにアクションに関しては秀でたゲームデザイン(ボス戦でのQTE乱発は嫌いでしたが)になっており、非常にやりごたえのある作品が多かったように思います。しかし……

 

如何せん、ストーリーがしょぼい!

 

ベヨネッタはともかく、ヴァンキッシュに関しては続編を作るつもりでいたのか投げっぱなしのED。MGRに関してはアクション性を追求するあまりメタルギアとしての側面をすべて削り去り、非常に残念な作品になっていました。(*あくまで個人的な感想です)

特にメタルギアに関してはシリーズ作品をほぼプレイしているほどに好きなシリーズだったので、そのガッカリ感たるや筆舌に尽くしがたいものがありました……。許さんぞ^q^

 

そして、今回『NieR:Automata』の製作がプラチナゲームスだと知ったとき、私の脳裏にはかつてのMGRの姿がチラついたわけです。

前作のニーアレプリカントゲシュタルト自体がトーリー重視の作品だったこともあり、ストーリーが苦手なプラチナに開発させたらまた残念な作品になってしまうのではないかという不安。

一応体験版もプレイしたのですが、あくまで体験版なのでストーリーに関しての不安を払しょくするには至りませんでした。その上、戦闘に関してはこれぞプラチナ!と言わんばかりの味付けが為されており、私はより一層不安を強めました。

そういった『プラチナが開発』という不安『シリーズ最新作』という期待を天秤にかけた結果、発売後しばらく様子見をするという判断に至ったわけです。

まあ、結果的に、そんなのは全て杞憂だったわけですが。

 

そんな私を購買に踏み切らせたのが、amazarashiの新譜『命にふさわしい』でした。

『命にふさわしい』はamazarashiと『NieR:Automata』のコラボレーション楽曲(作中では流れません)です。ジャケットに描かれた廃墟に立つ主人公達、同梱された絵本に濃縮された世界観、どれも素晴らしい出来栄えだったのですが、なんといっても楽曲自体のエネルギーが凄まじい

amazarashiは『季節は次々死んでいく』という曲のメロディーに衝撃を受け、それからファンになったのですが、あの曲を初めて聴いた時の感動を思い出しました。

あの時と違うのはメロディーと同時に歌詞にも衝撃を受けたことでしょう。

一見すると『NieR:Automata』の世界を歌ったように思える歌詞。しかし、その横に座っているのは私自身だという事に気が付きます。上品とも言えるメロディーに乗せられて、じわりと心根に染み込んでいく言葉。いつしか自分のモノとなったその感情達が、サビの到来によって一気にカタルシスへと導かれます。力強く繰り返される『心さえ無かったなら』という叫びは、一度聴いたら決して忘れることが出来ないほどのエネルギーに満ち溢れていました。

傲慢で自分の世界を推し通すわけでも無く、無様に相手の世界に媚びへつらうことも無い。こんなにも力強く、お互いの世界を尊重しあうコラボレーション楽曲を、私は今まで聴いたことがありませんでした。

 

「これだけ完成度の高い楽曲を聴いてしまったなら、当然コラボレーション相手の作品にも触れるべきだろう」と、プラチナ恐怖症に陥った私の背中を押すのには十分すぎるパワーを持っていました。

その後、ヨコオ氏のゲームをプレイしたことがあるハードゲーマーの友人から、プレイリポートとして「ストーリーはヨコオ」という言葉を聞くことも出来たので、もう私が購入を踏みとどまる理由はありませんでした。

 

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さて、前振りが滅茶苦茶長くなってしまいましたが(ここまでで2000字オーバー)

まずは簡単にあらすじ

 

地球へ突如として襲来した宇宙人。

彼らが用いる兵器「機械生命体」に圧倒され、人間は地上を追われて月へと逃げ去った。

人間は機械生命体に対抗するためにアンドロイドを製造。レジスタンスを組織する。

数百年に渡る、機械生命体とアンドロイドの戦争。

その最中、人間は最新鋭装備で身を包むアンドロイド部隊「ヨルハ部隊」を地上へと送り込む。

ヨルハ部隊に所属する主人公「2B」と「9S」は熾烈を極める戦禍の中へ身を投じ、そこに隠された真実へと迫っていく。

 

キャッチコピーは『これは呪いか。それとも罰か。』

 

前述の通り、今作はヨコオタロウ氏がディレクターを務めています。

ヨコオタロウ氏の作品はDODドラッグオンドラグーン)、ニーアと言ったシリーズ作品間で世界観を共有しており、DODシリーズ、ニーアレプリカントをプレイしているとより一層ディープな世界観を楽しめるようになっています。

しかし、今作ではそういった世界観の繋がりはあくまでお楽しみ要素に限られており、シリーズ初見の方でも今作の本筋を楽しむことは十分可能です。

シリーズプレイヤーにはおなじみですが、シナリオは基本暗め(一部では鬱ゲーとしても名高い)になっているので、苦手な人はとことん苦手かもしれません。

 

ゲームのジャンルはアクションRPG

前作も割と派手なアクションで戦うことが出来たのですが、今作はそれを大きく上回るスタイリッシュさです。このあたりは流石プラチナゲームス。登場キャラのモーションは非常に凝っていて登場キャラの戦闘モーションを見ているだけでも相当な時間を潰せます。

 

アクションRPGというだけあってレベル要素、カスタマイズ要素も完備。

カスタマイズ要素は

 ・キャラクターの武器変更(小剣、大剣、槍、拳。それぞれのカテゴリに武器が多数)

キャラクターのステータス補正・スキル付与

サポートロボ(ポッド)の武装変更……など

 

武器にはヨコオゲー恒例の武器ストーリー(装備強化に従って武器固有の小話が開示されていくシステム)も付いており、従来のファンも思わずニッコリ。

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                ↑武器変更画面

 

 

キャラクターのステータス補正は、一定のコスト内でアイテムを付け替えして攻撃力をアップさせたり、自動HP回復機能などを付けたり出来るものです。(今なんとなくロックマンエ〇ゼのナビカスを思い出した……)

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            プラグインチップカスタマイズ画面

 

 

ニーアの特徴だったイクラ弾幕(敵の遠距離攻撃がイクラのような見た目の弾)も健在。武器ストーリーもそうですが、こういったシリーズを感じさせる要素はファンとしては嬉しいですね。

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主人公2Bのビジュアル目当てで買った人も多いと思いますが、2Bはホントに素晴らしいデザインだと思います。

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                カッコイイ!

 

 

 

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                 カワイイ

 

 

 

 

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そしてなにより、なんかエロい!

 この3点が揃って、もう最強な気がします。

Twitterでも流行っていましたが、

そりゃ例のハシゴを登らせてローアングルで眺めたくなりますわ……

ここ最近見たキャラクターの中でも屈指のキャラデザだと思います。

 

ゲームの流れですが、シームレスで繋がるオープンワールドでメインクエストを受注し、それを進めるとシナリオが進行。それと並行して各地でサブクエストが受注できる。というオープンワールドゲームの鉄板形式です。進行具合によっていわゆるファストトラベル(拠点間の瞬間移動)も可能になるので移動のストレスは最低限に抑えられていると思います。

説明上オープンワールドとは言いましたが、今作は洋ゲーのような超広大な土地を舞台にしたゲームでは無く、舞台としては非常にコンパクトな作品です。人によっては手狭な空間に感じられるかもしれません。(実際、私も多少手狭に感じる部分があった)それでも、この作品を語るうえで、それは決してデメリットには感じません

なぜなら、トーリーの完成度が非常に高いからです。

そうです。ほかの方々がどう考えているのかは知りませんが、この一点さえブレていなければ、私は大満足なのです。

そして、本作『NieR:Automata』はそのハードルをしっかりと越えてくれました。

なにを言ってもネタバレになってしまいそうなので言葉を選ぶのも一苦労なのですが、なによりも素晴らしかったのは演出だと思います。

話の展開方法が巧い、とでも言えばいいのでしょうか。

プレイ前の先入観、プレイ後の思い込み。全てが良い意味で裏切られる

そして要所で与えられる、プレイヤーの胸を締め付ける選択肢……。

今作に関しては常に期待を上回る展開が繰り広げられた印象です。

前述のメインシナリオとサブクエストの絡ませ方も上手い。

メインクエストだけではわからない部分がサブクエストによって補完されていたり、サブクエストによって張られていた伏線がメインシナリオの思わぬところで回収されたり……

サブクエストが単なるおつかいで終わっていない所が素晴らしい。おつかいで水増しされた単なるやり込み要素としてではなく、物語にのめり込む要素としてのサブクエスだからこそ、やる気が起きるんですよね。

現在、おおよそプレイし終わった後ですが、今になって思い返してみれば不要なサブクエストはほとんど無かったように思います。ほとんど全てが物語のために用意されたやり込み要素であり、どれが欠けてもこの物語は成立しません。

釣り……スピードスター……ウッ頭が……(あくまで『ほとんど』です)

物語全てを堪能すると自ずと各種やり込み要素がほぼ100%になるというのはよく出来たゲームデザインだと思います。

 

どっかの洋ゲー(2つの意味で)みたいに、だだっ広い大海原に帆船で乗り出して小銭拾ったり、わけわからない欠片を集めるのはやり込み要素じゃねーよ!!(過激

 

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さて、唐突に思い立って書き始めたのですが、思いのほか筆が乗ってしまいました。

それだけ『NieR:Automata』という作品は素晴らしい作品でした。

間違いなくPS4史上に残る名作であり、私のゲーム史上に残る傑作です。

 

それは闘う事を宿命づけられた者たちの物語。

闘う意味、生きる意味、存在する意味。

感情とは、命とは、自我とは。

 

全ての答えは『NieR:Automata』の中に。

 

素晴らしい傑作です。超オススメ。

 

ー最後まで読んでいただき、ありがとうございました!-

 

@クリア後の興奮冷めやらぬ中で、わさび

ある日の夢

瞼を開いたとき、真っ先に僕はこの世界が夢であるということに気付いた。
だって、あまりに現実離れした風景だったから。
いや、正確に言うならば、目の前の景色は限りなくリアルだった。見覚えのある風景、見覚えのある建物。どうやっても見間違えようのない、純然たる僕のリアル。ただ、それらを取り巻く微妙な空気感、とでも言えばいいのだろうか。それが致命的なまでに間違っている。
僕は祖母の家の縁側に座っていた。周囲を山に囲まれた小さな村に建つ小民家。目の前には小さな川が流れていて、川の流れる音がここまで聞こえてくる。ただ、僕自身が思い出すかぎり、この家の縁側が使われているところを僕は見たことがない。物心付いた頃にはすでに物置スペースと化していたからだ。だから、こうしてまじまじと縁側を眺めるのは初めてなのだが、年季の入った横木は黒光りしていて、重ねた年月なりの威厳を湛えていた。その上で僕のような新参者が不遜な態度でふんぞり返っているのは、なんだか恐れ多い気がしてくる。直上から降り注ぐ夏の日差しから隠れるように、僕はこの縁側に腰掛けたようだった。日陰から僅かばかりはみ出した足先がじりじりと焼かれているのを感じる。汗が一筋、首筋を流れた。
ふと左手に視線を落とすと、僕は都合良く水の入った500mlのペットボトルを握りしめていた。暑さをごまかすため、ペットボトルの水を飲む。清涼感が喉を駆け抜けていくのも一瞬のことで、接種した水分はすぐさま汗となって吐き出されていった。
「今日は暑いね」
その時、僕は初めて隣に座っている少女の存在に気付いた。声のした方向、ようするに僕の右側だが、1mほどの間を空けて彼女は腰掛けていた。驚いたのはその容姿だ。純白のワンピースからのぞく、白磁のように透き通った肌。腰まで届きそうなさらさらとした金髪は日陰にあってなお淡い輝きを放ち、それをほっそりとした指先で弄んでいる。こんな日本の片田舎にはふさわしくない、幻想的とすら言える造形。
ほら、やっぱり夢だ。
夢は夢だと自覚することができれば自分の思うがままに出来る、なんて言葉をどこかで聞いたことがあるけれど、そんなのは嘘っぱちだということがわかった。
だって、どれだけ目を凝らしても彼女の顔だけは見ることは出来ないのだから。ほかの部分はくっきりと見えるのに、顔にだけ薄もやがかかって、そのディテールを曖昧にしている。ここらへんが僕の想像力の限界ということなのだろう。
「ねえ、キミはどうしてここに来たの?」
透き通った声で、彼女は僕にそう問いかける。僕を問いつめるような、一方で諭すような優しい声。
「......なんでだろうね、実は僕にも分からないんだ」
彼女の問いかけに、僕はなんだかバツが悪い気持ちになってしまう。
「ここに来た理由は無いのかもしれない。でもきっと意味はある。そんな気はする。」
自分でも不思議なくらいに、自然と言葉が口から漏れた。まるでそれが当然であるかのように、自分の意識より深いところの自分が、口べたな僕の代弁者を買って出たかのようだった。
「そう、だったら、ちゃーんと意味を見つけなきゃね」
白いサンダルを履いた足を無邪気にパタパタと遊ばせながら、彼女は何でもないことのようにそう言った。
「あ、見て、黒猫」
彼女が指さした先を見ると、全身黒一色の猫がこちらに背を向けて座っていた。身を焼き尽くさんばかりの日差しを一身に受けることを決意したかのようなその佇まいは、人々の罪を一身に背負おうとしたどこぞの聖人を思わせた。
「こっちにおいで」
ちっちっち、と彼女は黒猫の気を惹こうとするが、黒猫がこちらを向く気配はなく、ただ呼びかけに応じる形で力なく尻尾を左右に振っている。
黒猫は、ただひたすらに一点を見つめ続けていた。その視線の先には、
「......鯉のぼり?」
高い支柱に括り付けられた季節はずれの鯉のぼりが、ゆらゆらと揺れていた。照りつける太陽と山々の深い緑、それらと極彩色の鯉のぼりが織りなす非現実のコントラスト。
黒猫の側に近づいて、一緒に鯉のぼりを見上げてみる。広大な青空を背にたなびく鯉のぼりは、なるほど、確かに清流を泳ぐ鯉に見えるかもしれない。
「なんだ、魚でも食いたくなったのか?」
僕は冗談めかして言いながら、黒猫の体を撫でる。想像よりもずっと猫の体は冷たかった。どれだけ撫でても、猫は一向に鯉のぼりから視線を外そうとしない。
「......そう、あなたも鯉のぼりを上げたかったのね。」
気が付くと彼女も黒猫の側に来ていた。行儀良くワンピースの裾を抑えながらしゃがみ込み、優しく黒猫の頭を撫でる。
「大丈夫。きっと、今度は叶うわ。私が保証する」
いつのまにか湿り気を帯びた声で彼女がそう呼びかけると、黒猫はようやく鯉のぼりから視線を外し、しゃがれたような汚い声で一鳴きした。
なぜだろうか、その光景を見ているとどうしようもなく悲しい気持ちになる。知らず涙腺が緩み、目尻から熱がこぼれ落ちそうになるのを感じる。
だが、違う。これはきっと相応しくない感情だ。それだけは、何となく分かる。だから、僕は溢れ出しそうになる感情を抑えるため、必死に笑顔を作った。うまく出来ている保証はない。無様かもしれないけれど、こっちのほうが泣き顔よりも幾分かマシだろう。
その時、一際強い風が吹いた。汗で湿った肌の熱を、夏の風が空へとさらっていく。支柱に鯉のぼりを括り付けている紐がほどけ、重力から解放された鯉のぼりはフワリと空に浮かぶ。ああ、その姿はまるで、

天を往く龍のようだ。

支柱から力強く飛び立った龍は徐々に小さくなり、空高くそびえ立つ積乱雲の向こうへと去っていった。
そして、ここには僕と彼女だけが残された。
指先、足先、体の末端から感覚が消失していく。世界が日差しに満たされていく。
夢から覚めるのだと、本能が理解する。
「どう?ここに来た意味は見つかった?」
朧気になる景色の中、蜃気楼の向こう側から彼女が問いかける。
「うん……きっと……」
強烈な夏の日差し、きらきらしたペットボトル、儚げな彼女、冷たい黒猫、鯉のぼり。
覚えている。この感情を、この景色を、この現実を。だからこそー。
「またいつか」
そう、力強く答えることが出来るのだ。
「絶対に忘れないでね、その意味を。そしてー」
瞬きの間をおいて
「その時になったら、また会いましょう」
いたずらっぽくそう言う彼女は、いままで見たことが無いほど美しい笑顔を浮かべていた。