ほっじぽっじすてーしょん

広く浅い、多趣味野郎の時事録

ネガティヴ・レスト

 ※不快な表現が含まれている可能性があります。ご了承のうえ、お読みいただけますと幸いです。

 

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 睨みつけたら勝手に燃えた。

 突然ではあったけど、唐突ではなかった。僕のなか、その奥底では熱いものがずっと燻っていたのだから。それが視線に宿ったのだろうと勝手に納得して、僕は目の前の惨状をぼうっと眺める。

 可笑しな悲鳴をあげながら、燃え転がる人。

 左へ転がったと思ったら右へ、また左へ。身を焼く炎を消すように、必死になって手足をばたつかせているけれど、火勢はおさまるどころかより激しさを増していくようだった。気がつけば耳障りな叫び声が止んでいる。体より先に喉が焼け落ちたのかもしれない。

 ばたばた、めらめら。

 声のない苦しみはイマイチ現実感にかけていて、シュールな映像作品を見ているかのようだった。子供の頃にナメクジに塩をかけたことを思い出す。泡を出しながら縮んでいくナメクジ。生物の神秘に触れた喜びと、確かな苦しみを理解する無邪気な心。

 目の前の炭は二酸化炭素やら水分やらを煙として出したのちに、やっぱり縮んで胎児のように丸まって転がっていた。生まれてきたときと同じように最期を迎えたのだ。生命の神秘を感じた。

 「いやあぁぁぁっ」

 一連の燃焼が終わって現実が追いついてきたのだろう。周囲の人間が一斉に騒ぎ出した。いの一番に叫んだのは先程まで威勢よく燃えていた男と一緒に僕を見下していた女だった。ちょうどいいと思った。

 睨んだ。燃えた。

 理由はわからないけれど、この能力には再現性があるらしい。それが解れば十分だった。男と同じように、女も燃えた。何事も1回目の感動には敵わないなとぼんやり考えていると、人々が逃げ出していることに気づく。

 「やめてよ、まるで僕がバケモノみたいじゃないか」

 背中を視線で薙ぎ払う。1人ずつ。右から左へ。素早く、しかしじっくりと睨みつける。忘れないように。忘れさせないように。この熱を僕の身に詰め込んだのはあなた達なのだから。  

 かつて僕を見下した人。認めなかった人。嘲った人。本物のバケモノたち。

 「なあ、おい。ちょっとだけ落ち着こうぜ」

 あたりを包む苦悶の叫びとは異なる、聴き馴染んだ声が届いた。振り返ると幼馴染の親友が立っていた。

 「確かに、あいつらはお前に酷い事をしたかもしれない。でも、もうこれ以上はやめよう、な?」

 肩が、視線が震えている。彼は恐怖している。誰に。僕に? なぜ恐怖する必要があるのだろう。だって君はー

 そこまで考えて、僕は彼を燃やした。

 彼は自覚していた。自身が燃やされる可能性を。今までの自身の言動の本質を。馬鹿な僕は、たったいまそれを理解したから燃やした。悲しかったから丹念に燃やした。激情のような橙色の炎が、徐々に冷淡な蒼へと変わっていく。僕の感情、その温度とは裏腹に、炎はより熱くなっていく。あとには残留する熱量と数片の骨だけが残った。白骨とは言えない、黄ばんだ骨片だった。骨なんかどうでもよかった。すべてがどうでもよくなった。

 とりあえず煩かったので周りの人間全てを焼いた。知っている顔も、知らない顔も平等に焼いた。

 ある程度静かになったら自動車の音が気になったから焼いた。僕なんかが一生乗ることができないカッコいいスポーツカーも、無難で退屈な軽自動車も全て焼いた。タイヤのゴムが焼ける嫌な臭いに腹が立って、ちょうど目についた電車も焼いた。

 ここまでくると理由なんか必要なくて、焼きたいから焼くのではなく、焼くものを探すようになった。街灯を焼いた。フェンスを焼いた。家を焼いた。学校を焼いた。ビルを焼いた。鳥を焼いた。犬を焼いた。猫を焼いた。

 目に映る全ての物が憎らしくて、腹立たしくて、妬ましくて、羨ましくて、眩しくて。

 消えてしまえと願いながら丹念に焼いた。僕の真っ赤な感情が、色鮮やかな世界をなぞっていく。誰かの悲鳴、ごうごうと唸る火焔。絵に描いたような地獄の様相。そんな光景に救われていることを自覚して、僕は火勢を強める。

 気が付くと世界はすべて燃え落ちていて、一面の消し炭の上に灰色の煙が漂うだけになっていた。上下に分れた黒と灰。「世界は灰色と黒で出来ている」という誰かの言葉を思い出す。その通りだと思う。

 困ったことに、僕の熱は収まっていなかった。これだけ燃やしても僕の心は満たされなかった。それどころか、よりいっそうの欠落を感じていることに怒りが募る。

 燃やせる対象を探して、僕はひたすらに周囲を睨みつける。探す。狂ったように首を振り回す。燃え尽きていない、わずかな破片すらも燃やす。上手く燃えなくて苛立ちが募る。頭を掻きむしっても、喉がつぶれるまで叫んでも、満たされない。満たせない。涙が零れる。違う、僕が欲しているものはそんなものじゃない。憎らしいのだ。消し去ってしまいたいのだ。涙で僕の心は満たされない。

 頭を抱えて転がりまわっていると、残骸の中でなにかがキラリと光った。咄嗟に睨みつけようとする自分を押しとどめてゆっくりと近づいてみる。それは鏡だった。煤けた輝きの中に自分の姿が映っている。掻きむしった頭はぼさぼさになり、薄汚れた顔を涙が流れた跡がみっともなく模様をつくっていた。今まで気が付かなかったが体も酷いもので、衣服が肌と共に焼けただれ、あちらこちらに火傷をしているようだった。その痛みを自覚するよりも先に、ただひたすら醜いと思った。

 「ああ、そうか」

 初めからこうすればよかったのだ。独りで納得する。もう誰も居ないのだから当然だ。大変申し訳ありません、謝る相手もすでに居ない。

 それを残念に思いながら、僕は鏡越しの僕を焼いた。

 

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 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。特になにもなく、暗ーい短編になりましたがいつも通りということで、なにとぞ。

 書き終えた現在、午前5時10分。山々の稜線から緋色が立ち上り、重苦しい空の紺色と美しいグラデーションをつくりあげています。

 夜と朝の中間、夕と夜の中間、この曖昧な時間の空は多彩で好きです。

 曖昧な空模様を眺めながら、田舎と街の中間で、曖昧な文章を書き連ねる。このうえなく自分らしい中途半端な生き方だなと辟易しながら、今回は筆を置きたいと思います。

 楽しい文章も練習したいなー。

天気の子を観てきた

 こんばんは。わさびです。

 

 タイトルの通り、映画『天気の子』を鑑賞してきました。

 良かったです。とりあえずそれだけ。

 詳しいことは『片隅で感想文』のほうで書きたいと思いますが、小説版を読んだあとでもう一度鑑賞してから書きたいのでいつ上がるかは未定です。

 比較するのはナンセンスかもしれませんが、『君の名は。』と比べて好き嫌いは分かれやすいだろうなぁ……と思いました。監督自身が「賛否わかれる」と言っていたのも納得です。

 しかし、それもあくまで物語の話。新海監督作品らしい美麗な映像、人々が暮らす『街』の空気感。合う合わないはともかく、アニメーションの最前線にある素晴らしい作品です。

 是非、劇場でご覧ください。

 

 特に書きたいこともないので今日はこれだけ。

 流行が過ぎ去る前に、なんとか記事を書きたいと思います……!

 頑張れ!!自分!!

眠ることを諦めた朝に

 おはようございます。わさびです。

 ここ最近、上手く眠れなくてキツイのでここに吐き出したいと思います。

 

 眠気を感じて寝ようと思っても、どうしても眠れません。

 寝ようとすると悪い想像が頭を埋め尽くしてどうしようもなくなるのです。

 自分の現状。過去の失敗。自分に出来ないこと。浪費する日々のこと。進んでいく友人たちのこと。金のこと。無力なこと。無気力なこと。

 どれも突き詰めていけば自分に辿り着く。そうやって自己嫌悪に陥って、さらに深いところに潜っていく。思考の悪循環から抜け出せなくなる。

 気が付けば一時間以上もそうやって精神的にボコボコになっていて、それなら眠ることは諦めようと、気が紛れることに逃避する。暗澹たる気持ちに束の間の麻酔をうつ。

 私が犯した間違いは、どうやら私という人間にとって致命的な間違いだったようです。気が付けばとうに立ちあがるだけの力はなくなって、毒虫のように地べたを這いずることが生きがいです。今となってはどうやって胸を張って歩いていたのかも、もうわかりません。

 どこで間違えたのだろうか。そう考えている今もきっと私は間違えていて、ぶつける先のない想いを、あてのないブログにひっそりと書きなぐる。

 良いじゃん!頑張れ!すげぇじゃん!

 その言葉に込めるはずの純粋だった想いが、別のモノに変わっていることを自覚した朝。

 醜悪な寄生虫の心持で、鳥のさえずりと虫の鳴き声に耳を傾けながら、朝もやに沈んでいまにも窒息しそうな街を見る。

 意味なんてないさ。意味が分からないからね。

 

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。眠れるといいなぁ。